4月28日
朝、絵の練習。奈良の銀行へ行き、磁気の弱くなった通帳を交換してもらう。そこで、五百円の金を下ろす。ついでに啓林堂によって、また癖で本買う。明治の短編小説集、オモロそう。
それで今日も漫画を描かずに本を読んでしまって罪悪感に苛まれた。仕事よりもラクな道楽のほうに流れてしまった。「研究みたいなもんやからええやろ」と自分に言い訳しているのである。それくらい漫画を描くのは気を抜くと面倒くさなる。
4月29日
朝、9時に起きる。漫画を描く。あまり捗らない。佐藤りこというセクシー女優を知り鈴村あいり以来の衝撃を受ける。
絵の練習。『破戒』オモロい。
自分はもうセンス、イメージだけで描くのはやめる方向。世間がセンス合戦になってきた。芸術家の漫画家には負けるからその勝負から降りる。俺はそうや、能の無い鷹や。これから漫画を描くうえで、ひとつの大きな問題があって、その肝心のセンスが別に目新しい訳でもない可能性がある。自由を求めても自由には描けない。自分はガッツリ人間を描きたいタイプの漫画家だ。イメージの作家ではない。
近代文学読んで、近頃は基本的なことを探している。ひとつ気がつく。今後おれに必要なのは戒律です。ドグマや。『奈良へ』はその為の通過点。
4月30日
昼夜逆転のはじまり。体調微妙。おれの祖父も、春は気圧の変化で体調が優れない日が多かったらしい。
夕方、絵の練習。
漫画の描きはじめ。
Twitterで流れてきた、平口広美の漫画のあるコマが気になる。勃起した男が、西洋風の部屋を真横にぶっ飛んで来る絵。
むかし根本さんに平口漫画を勧められた。ほんで『マッスル』神保町で買うたな。
東京に住んでたときバイト終わりに近所を歩いてたら、前の角から平口さんが歩いてきたので、いきなり挨拶して、一緒に写真を撮ってもろたことがある。
最近は人と会わない為、Twitterをすればむしろ孤独増幅装置になることもある。自分の愚かさを再確認するだけなので、眼を細めてTLを眺める。アホらしい。漫画界隈は天国でも地獄でもない。煉獄という感じ。良い奴ばかりじゃないけど悪い奴ばかりでもない。
青林工藝舎から献本して貰ったアックス134号読む。新人賞から五年や。モリノダイチさんの美大漫画、福士開さんの恋愛漫画。近い年齢の20代の人々が、自然主義的な、静謐な作風でよい。
おれも今後、自分の中で戒律きめて、静謐へGoかな。もう結構、考えてる。
ラース・フォン・トリアーみたいにドグマ95みたいなん作ろおもて。それもまたやってみたらオモロいかなおもて。
『奈良へ』は、回想シーンは使わない事だけはルールとして初めからある。
しかし『奈良へ』はスラップスティックな話やな。もっとえらいことなりそうやな。